ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女

雑誌やラノベ、実用書(僕が読む「実用書」とはふつうの人にとっては大抵クソの役にも立たないくだらないものなのだが)を読むことが多く、本格小説はあまり読まない。しかし、スティーグ・ラーソンの「ミレニアム」シリーズにはどっぷりハマった。原作・映画(ハリウッド版、続編いつ?)ともに最高だ。スティーグ・ラーソンはスウェーデンの反人種差別・反極右を掲げる元ジャーナリスト。「ドラゴンタトゥーの女」に始まるミレニアム三部作ではスウェーデン社会の病みと闇が生々しく描かれた。フィクションではあるが、リアルかつ緻密な設定は自身のジャーナリスト経験を活かした構想、取材、調査が膨大な時間だったことを物語る。そして何より、キャラクターが魅力的。特に、ワガママで女ったらしだが鋭い視点でストーリーに切り込んでいく「名探偵カッレくん」(本人はこの呼び名を嫌っている)ことミカエル・ヴルムクヴィストは人間らしくて感情移入してしまう。
ミレニアムシリーズは一説によると6部まで構想があるとのことだが、残念ながら作者であるラーソンは出版契約を結んだ年に他界してしまっている。その後、1部が刊行され全世界800万部ベストセラーとなった。完成していた3部まではラーソン作品として出版され、その後の権利を巡っては泥沼のゴタゴタがあった。そのあとを継いだのが同じくスウェーデンのノンフィクションライター、ダヴィド・ラーゲルクランツである。クランツはスウェーデンの英雄でありフットボール界の至宝ズラタン・イブラヒモビッチの自伝「I AM ZLATAN」の著者だ。ラーソンの作り上げたミレニアムの世界はそのままにクランツ版ミレニアムとして出版されたのが今作「蜘蛛の巣を払う女」なのである。まだ読んでいる途中だが、面白かったらイブラヒモビッチも読んでみよう。