PRODIGY

(via:Supremenyc

年齢的に、レジェンド的な位置にいるアーティストが亡くなることが最近多いがプロディジーは42歳(個人的には充分プロディジーとハヴォックのMOBB DEEPもレジェンドなんだけど、まだまだ現役感があった)GANGSTARRのグールーは49歳、BEASTIE BOYSのアダムは48歳でこの世を去ってしまった。昨年亡くなったデヴィッドボウイに至っては69歳。グールーやアダムは僕らよりも少し上、ボウイなんかは一回り以上の世代がど真ん中ということになるが、プロディジーは僕らが中学、高校生のころに聴いていたバリバリのアイドル世代なのだ。だからこそ、ショックだ。リアルタイムで聴いていたアーティストが亡くなってしまうのは悲しい。切れ長のタレ目が印象的だったPRODIGY。彼と彼のMOBB DEEPについて僕の記憶の知る限りを振り返る。


(Via:amazon

弟とMTVの「CHECK THE RHYME」を欠かさず観ていた2003年頃、突如として二人は僕たちの前に現れた。「MOBB DEEP!名前は聴いたことあるが、新譜かあ。どんなんやろ」ぐらいに見ていてガッツリ撃ち抜かれたのである。地を這うような怪しいアングラトラックに、これまた悪そうな二人がラップしている。NASと同郷のギャングの二人組。MOBB DEEPが与えたハードコアな印象は、頭にへばりついて離れなかった。それが、アルバム「Amerikaz Nightmare 」(2004)である。僕の中でのMOBB DEEPはこのアルバムに収録されている「Got It Twisted」から始まった。プロデュースはアルケミスト。同アルバムではLudaCris、Alicia Keys、Twistaなどをプロデュースしてヒットを飛ばし、ラッパーとして輝かしいキャリアを踏み出す不朽のデビュー作「The College Drop Out」をすでにリリースしていた飛ぶ鳥落とす勢いのKanyeWestも「Throw Your Hands (In the Air)」でプロデューサーとして参加している。



僕よりも上の世代はさらに遡って1997年の「Infamous」がリアルタイムベストのアルバムなのだと推察する。しかし、Infamous収録の「Shock Ones Part Ⅱ」はあまりにも有名である。トラックだけなら僕ら世代のヒップホップヘッズだって耳にしたことがあるはずだ。なぜなら2003年公開のEminemの自伝的映画「8 Mile」のラビットVSパパドックのフリースタイルバトルのクライマックスシーンで使われているからだ。このシーンは何度見てもシビれる。(ビッチなヒロインアレックス役で出ていたブリタニー・マーフィーも亡くなってしまったんだよな。そして宿敵パパドック役のアンソニー・マッキーはファルコンとしてキャプテンアメリカと仲良くやってる)


先のアルバムから2年後の2006年、50CENTが黄金時代を迎え暴君の如くシーンに君臨。彼の主催するG-UNITの一員としてMOBB DEEPも招致された(地元のおっかない先輩を50が誘ったって感じだと思っていたけど、意外と年齢が近いから仲良しだったんだね)類は共を呼ぶ。ロイド・バンクス、トニー・イェイヨー、ヤングバック、M.O.Pにメイスも加入。当時のG-UNITは勢いがすごくて最強軍団だった(今ではみんなどうしているのだろうか)地のギャングスタイルを邁進する輩たちの集団だっただけに、PRODIGYも銃の不当所持で刑務所に入ってしまったりとトラブルが多かった。出所後はアーティストとしてカムバック。活動を続け、2016年には生き抜くための獄中メシを特集したレシピ本を出版するなどユニークなサイドビジネスでも注目を集めた。亡くなる前日には相棒のラスベガスでハヴォックとライブをしており、持病の悪化によって体調を崩し緊急入院。そのまま息を引き取ってしまった。



ほんの少し、簡潔に振り返ってみただけでも僕のヒップホップ史に深く刻まれているアーティスト、ラッパー、タレントだった。多くのヒップホップファンがこの死を哀しんでいる。2011年にPRODIGYはNYのアイコンとしてSUPREMEのモチーフとしてフューチャーされた。HYPEBEASTの言葉を借りるとすればまさに、 Rest In Power. P.その一言に尽きる。

NYはブルックリンをホームタウンに持つワールドフェイマスJay-Zは先日ラッパーとして初めて、ソングライターとして殿堂入りを果たした。あらゆるラッパーにTwitterで感謝の意を表明したのだが、その中にMOBB DEEPの名を見つけることが出来た。大いなる力はこの世を去り、天に召されたのだ。NYストリートの伝道者よ安らかに。