ジャンクランクファミリー(①)(②)


(画像:amazonより)

俺たちのアニキ、高橋ヒロシが帰ってきたぞ。「キク」「クローズ」「キューピー」「ワースト」数々の伝説的アウトロー漫画を生み出してきた巨匠が、3年ぶりにヤングチャンピオンで連載開始。というニュースを聞いたときは一体どんな漫画が始まるのかと胸躍った。また、戸亜留市が舞台の喧嘩モノか?いや、「最高の男」坊屋春道がサラリーマン金太郎さながらに腐った世の中を世直し、現代社会に一石を投じる骨太社会派マンガ?はたまたリンダマンが主人公の格闘技漫画か?と想像を膨らませていたら、俺たちのアニキのスケールは3年間の沈黙の間にとんでもないことになっていた。北斗の拳さながらの荒廃した近未来が舞台のディストピアSFだったのだ。おいおいマジか。冗談だろ?ダッハハハ!と高橋先生のキャラのように笑っていたのだが、これがなかなかに高橋ワールドの新たな可能性を示唆する作品に仕上がっている。学ランを着た不良は出てこないが、男たちのツラがまえは高橋ヒロシの描く、それだ。やっぱりかっこいい。男が憧れる男である。ああ。どこかで見たあいつやあいつ。世界設定は未知だが、どこか親近感が沸いてくる。(自分にはもちろん似ても似つかないのだが)

高橋先生はこういうこと言い合える仲間がいたらいいな。と思わせ、いるじゃん俺にもこういうやつら。と、最後には身近な仲間の大切さに気づかせてくれるのだ。本当の仲間ってなんだ?思いやりって何だ?愛とは、絆とは、優しさとは、強さとは。なんだか恥ずかしくて、恐くて、ビビって目を背けてしまうような感情に真っ直ぐ、鋭く向き合ってくる。セリフもそうだ。変に着飾った言葉はない。ただ真っ直ぐ、芯と信念のあるセリフをキャラに語らせ、読者に語りかけるのである。高橋ヒロシ作品をマンガでちゃんと読んでいるか否か、読んでうわべだけを真似するのではなく、中身まで正しく理解しているか否かによって、男同士の付き合いが楽になったりもする。つまり、男の共通言語と足り得るのが「キク」「クローズ」「キューピー」「ワースト」であり、高橋ヒロシ作品の魅力なのだ。

新たなジャンルへの意欲作となった今作は、不満だらけの窮屈な青春時代よりも、さらに殺伐とした極限の世界で人間同士の葛藤を描く。生と死に真っ向から挑む全く新しい高橋ヒロシ。しかし、そこには春道やブルや石田小鳥や秀虎さんのDNAが濃厚に詰まっていて、陣内や九頭神竜男、我妻涼の血が脈々と流れ、月島花や花木九里虎の強靱な骨肉と意思で構築されている。今後の展開も非常に楽しみだ。

だが、今でも個人的には教師になったゼットンが鈴蘭に赴任してくる最強教師マンガが読んで見たいと思っている。