Tyler,the Creator in LIQUIDROOM

10月20日。タイラー・ザ・クリエイターが東京にやってきた。ラフレシアメンバーのSleep purpとともに公演に潜入。恵比寿駅前、終電前に駆け込む人とは対照的に、改札から出てくる人はタイラーの展開するブランド「GOLF WANG」のアイテムを身につけていたり、スケーターブランドに身を包んでいる人が多かった。これから会場へ向かうのは一目瞭然である。リキッドルームは階段から長蛇の列。チケット番号順での入場となっており番号を呼ばれたグループ順に中に入れる。僕らは早い番号だったのでほとんど待つことなく多くのファンでごった返したエントランスをくぐり抜けることができた。

入場してすぐはステージの前に2〜3列のクラウドがいたくらいだったが、あっという間にフロアは満杯に。周りを見渡すとほとんどが外国人だ。僕らアジアンを含めさまざまな人種が入り混じるるつぼと化したフロアは世界的な人気を裏付ける光景だった。ステージには最新アルバム「Flower Boy」のメインモチーフでもある大きなひまわりがいくつも飾られている。

入場から一時間も経たないうちに、タイラーのバックDJを務めるTacoがフロントアクトで登場。(それまで音もなく会場がライトアップされたままじっと待つのは辛かったが)Tacoがスピンすると漂っていたクラウドたちも一斉にステージへと押し寄せた。もはや身動きを取ることも難しい。うっかり気を抜くとモッシュの波にのまれてしまう。20分ほどTacoがDJをして大本命が登場。(この時点でもう汗だく)スター揃いのOFWGKTA(オッドフューチャー・ウルフ・ギャング・キル・ゼム・オール)を束ねるタイラー・ザ・クリエイターの登場である。

脇を固めるのはジャスパー・ドルフィン。タイラー今年の夏にリリースした4枚目のソロアルバム「Flower Boy」から「Boredom」「911」を始め、過去のアルバムからの人気曲を惜しみなく披露した。タイラーの魅力は、地を這うアナコンダのように太くて低いベーストーンの声とフロウ。そしてスレスレのジョークセンス。ユーモアたっぷりのヴィデオや振る舞いでメディアをにぎやかすお騒がせMCなんて言われている。が、同じ曲中にいくつもの人格のタイラーが登場し、ホラーテイストな内容を歌ってもエンターテイメントとしてしまうその世界観は、才能という言葉で片付けてしまうには余りあるほどに練り込まれている。めちゃくちゃで、トリッキーなキャラクターの中に知性を感じさせるのが人気の要因の一つではないだろうか。

熱狂の頂点は同アルバムに収録されたエイサップ・ロッキーとの「Who Dat Boy」。ScHoolboy QとちょっとしたTwitter上でのやりとりを繰り広げ物議を醸した一曲(出典:FNMNL)である。タイラーの獣のようなライミングとともに人が沸く。僕は運悪くタイラーの取り巻きがステージからかましやがったダイブの餌食となった。岩のような大男の体重が載った、重厚なティンバーランドブーツのカカトがアゴにヒットしたのだ。痛みと衝撃で気を失いそうになり、後ろにのけぞった拍子に被っていたSupremeのジェットキャップがフロア呑み込まれてしまう。すぐ見つけることができたのは、タイラーを最後まで見る!という強い意思のおかげか。とにかくすごい盛り上がりだったのだ。僕は痛みも忘れて、モッシュをはねのけながら狂乱の渦の中に居続けた。(顔は1週間くらい腫れた)


終盤にはファーストアルバムから、フランク・オーシャンをフィーチャリングした「She」をパフォーマンス。ファンを歓喜させた。フロアが一つになりオーシャンパートを大合唱。(歌詞の内容は背筋が凍るほど恐ろしく不気味だが)

そして最後には「See You again」でシメ。僕がアルバム中もっとも好きな曲だ。手を合わせて深くお辞儀するタイラーも満足そうだ。しばらくタイラーの声で曲中のイントロ、特徴的なフレーズである「Okay, okay, okay, okay okay, okay, oh」が耳に残り、へばりつくように脳内でリピートされた。僕は鼻歌まじりにリキッドルームを後にした。

タイラーのショーは一時間弱。深夜2時半には公演は終了となったが、どうせならオールナイトパーティの方が始発も走るし、余韻に浸れる気がする。(Smash主催のイベントはいつもこんな感じなの?)そのおかげもあって午前2時半に恵比寿の街に解き放たれたれた僕らは、近くで先輩たちがDJをやっているパーティへと足を運べたわけなのだが。






次回は新年早々にSleep purpとMura Masaの公演に行く予定。