ミニマル外遊び
時間が停まった場所
夏は海。ではなく、リゾートプール、でもなく山。の中の、川へ。これが山に囲まれた田舎育ちの少年の過ごし方。青年になってこの心地良さが一層魅力的に感じる。水着とタオルをバックに放り込み、友人たちは銛(もり)と釣竿を携え、他には一切の道具を持たずに山道を車で40分ほど登れば、人のいない沢の入り口にたどり着く。大人になって車があるからこそ、来られる秘密の場所だと、友人は語っていた。甲府盆地の夏は地獄の釜だ。降り注いだ日差しで熱された盆地は夜になっても冷めることはない。そんな暑さから逃れられる場所。童心に還り、はしゃぎ回れる場所がそこにはあった。
圏外の楽園
日差しは生い茂る樹木によって遮られ、昼間でも涼しく、木漏れ日が美しく水面に反射する。富士山にさえWi-Fiが飛んでいる時代に、ここは圏外だ。石で窯をつくり、落ち葉や木々を集めて火を焚く。泳いでいる魚は銛で突くか、釣るか、網ですくいあげる。沢に流れる水は澄み切っていてキンキンに冷たく、太陽が照らしていても、時折焚き火で身体を温めなければ浸かっていられない。贅沢な源泉かけ流し天然水プールだ。ここがなんという山なのかも、地名も正確には分からない。そんなことはどうでもよくなるほど、気持ちがいい。
美しいヤマメが簡単に(というのは友人たちがヤマメ漁に慣れているからだ)獲れる。
各々、釣りをしたり、泳いだり、火を守ったり、沢に沿って冒険したり、自由な時間を過ごす。普段のことは忘れ、大人であることもどこかに放り投げ、非日常感にどっぷりと浸り、リフレッシュする束の間のひと時である。
ここは石が重力すら忘れてしまうチルアウトスポットなのだ。僕らも日々の重力から開放されて浮かれた夏の日。
text/SNYZY・PINKS
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